2020年12月19日土曜日

俳句への取り組み

 山登りをする人は、山路の平坦容易なることを欲しない。断崖絶壁に突き当たっても驚かぬ。いよいよ剛健なる英気を湧き立たせる。勇躍、登攀して快哉を叫ぶ。

越えなばと思ひし山に来てみればなほ行先は山路なり。一山を越えて、ためいきをつくような人は、山登りの愛好者ではない。

山登りは人生行路の縮図である。人生行路は、紆余曲折、断崖絶壁の連続である。好んで進めばいよいよ展望は開け、興趣は尽きない。心身共に研磨鍛錬される。紆余曲折にうろたえたり、断崖絶壁にしょげかえったりする人は、人生行路の落伍者である。

                   元 駒澤大学総長 山田霊林禅師 著

                  「正法眼蔵辨道話・禅の講話」より

2020年10月30日金曜日

九年母全国新年俳句大会中止について

 本日の九年母12月号の編集の席で、同人会が来年1月に計画している恒例の九年母全国新年俳句大会の開催について、現下のコロナの感染状況に鑑み、中止しては如何かとの提案が柏原同人会長からありました。同会長、片岡編集長と私の3役で協議しました結果、中止やむなしとの結論に至りました。

国内、国外とも感染拡大が収まらず、インフルエンザも加えた大流行が懸念されている中、多数の高齢者が一堂に会して飲食することの危険性を勘案し中止することにしたもので、会員の皆様には、ご理解をお願いしたいと思います。その代りに本部主催の句会(吟行)を開催して、その席上、新推薦作家や新同人の披露を行い、九年母賞の表彰を行いたいと思っています。九年母賞の副賞につきましては、ワイナリーから受賞者の自宅に直送して頂く予定です。代りの本部句会の内容につきましては、別途連絡します。

日常生活の様々な面で、非日常が日常になりつつあります。日常化して行かないと、感染する可能性があるからです。風邪でも何でもないのに終日マスクを付ける事など、昨年の今頃には、考えもしなかったことです。それが、今では当たり前のことになっています。

ご高承の通り、感染を避けるためには、密閉・密集・密接の三つの密を避けてマスクを付け、外から帰ったしっかり手を洗うことが大切です。対策を守り、体を冷やさず、栄養と睡眠を適切に取る。このようにして、自分の健康は自分で守りましょう。幸いにして会員の中から感染者が出たという連絡は未だ有りませんが、決して油断せず、日々健康に気を付けて過ごされますよう願っております。

2020年10月7日水曜日

運営基金の創設のお報せ

 高齢化の急速な進行に伴う会員の減少に加えて、新型コロナウイルス感染拡大に伴う諸行事の中止などにより、会の収入が大きく減少しています。これは、ひとり当会ならず、他の結社でも同じ状況であり、発行所に寄贈頂いています有力な結社誌を拝見しましても、その多くが運営基金への協力を毎月呼び掛けておられます。このような状況に鑑み当会におきましても、去る9月27日に開催されました本年度第2回運営委員会にて、運営基金の創設が決議されました。その内容は次の通りです。

    基金の名称  九年母協力基金

    創設日    令和2年10月1日

    寄付金額   一口千円以上、何口でも 何回でも

    払込先    ゆうちょ銀行備付けの払込用紙にて払い込んで下さい

           口座記番号 0110-5-5220 加入者名 九年母会

           会費の口座と同じですが、会費と一緒に払い込む場合は、

           その旨付記して下さい。また、払込手数料はご負担願います

    資金管理   運営委員会

    謝礼方法   九年母誌に氏名・俳号を掲載して、謝意を表します

    備  考   租税特別措置法の対象団体では無く、税額控除は有りません

 新型コロナ拡大の中で、会員の皆様にご負担をお掛けすることはまことに心苦しい限りですが、ご協力をお願いします。す。                                                                     

2020年9月3日木曜日

鳥取交流吟行会中止について

 10月17〜18日に計画していました鳥取交流吟行につきましては、コロナの感染拡大状況を勘案し、中止することにいたしました。8月号での参加者募集に対し、たちまち満員になるほど楽しみにして頂いたのですが、感染の峠は越えたというものの、全国で連日1000名程の新規感染者が発生している状況や、高齢者の多い団体であること、等を考慮し、慎重な道を選ばせて頂きました。

これまで、交流会の準備を進めて頂きました、髙田栄子様を初めとする鳥取支部の皆様や、推進役を務めて頂きました同人会の役員の皆様のご苦労に対し、感謝を申しあげます。また機会を見て、鳥取の皆様と直接お会いし、交流を深めたいと思います。今回の交流会に応募して頂きました皆様にも御礼申します。今年の交流会は無くなりましたが、次の機会を楽しみにお待ちください。

それにしてもコロナの影響で、句会場の確保が難しくなって来ました。様々な団体との、会場の取り合い競争の様相を呈しています。早朝から受付に並んで抽選で決めるようになり、本部例会の会場担当の方が苦労しておられますが、それでもなかなか取れません。他の結社の俳誌を拝見しましても、会場が確保できないとの理由で、句会が中止になっているケースが散見されます。交通の便が良くて、100名程度の会場が近くにある方は、是非ご連絡下さい。既に加古川市や姫路市の施設の情報を頂いています。

大阪市では、100名の会場に50名しか入れて頂けない場合は、会場費を半額にして頂けるとか。神戸市でもそうなると有難いのですが。厳しい残暑が続きます。コロナや熱中症に十分お気を付けください。

2020年8月2日日曜日

季題の勉強

 先日、課題句の選者をお願いしている方から相談がありました。その方が「菌」という兼題を出されたのですが、集まった応募句に中には、この兼題を「きん」と読まれて、細菌の意味で句を詠まれたものが幾つかあったとの事でした。この兼題は「きのこ」と読まなくてはなりません。殺菌や滅菌の菌ではありません。
 ホトトギス新歳時記では「菌」が主題で、傍題に「茸」があります。毒茸・茸番・茸飯なども傍題として出て来ます。一方、角川合本歳時記では「茸」が主題で、「菌」は傍題に有ります。ややこしいことですが、「菌」という兼題が与えられたら、先ず歳時記でどのような内容のものかを確認することが大切です。歳時記には次の句が載っている筈ですから、これで「菌」を覚えます。
    
    爛々と昼の星見え菌生え    虚子

 季題の中には、こんなのが季題?、と思うものが少なくありません。数年前、課題句の兼題に「瓢の笛」(ひょんのふえ)が出された事があり、発行所にも数件の問い合わせの電話がありました。曰く「ヒョウタンの笛とは何のことか」。「いすのき」という植物の葉に出来る虫こぶの事で、虫が出た穴を吹くと、ひょう・ひょうと鳴る。これを瓢の笛と言う、と説明して、納得して頂きました。
 「火事」という季題があります。年中発生する火事が、なぜ冬の季題になっているのか。「河鹿笛」という季題は河鹿の声なのか、河鹿を呼び寄せる笛なのか。「竈猫」(かまどねこ)とはどんな猫なのか。「樫鳥」(かしどり)という鳥はどんな鳥なのか。「がうな」とは、「もろがへり」とは何の事か。歳時記には知らない事がたくさん載っています。角川俳句大歳時記や講談社版日本大歳時記などを読み始めると、楽しくて時の経つのを忘れます。
 日常的に使う季題を学ぶことに加えて、歳時記を読んで、新しい知識を身につけることにも務めて頂きたいと念じています。

2020年7月8日水曜日

コロナ後の課題

7月2日の本部例会から、コロナ後の本部活動が復活しました。コロナ以前の本部例会では、70名収容できる神戸市の施設に毎回50名程度の会員の参加がありました。ところが、収容人数の半分しか入場を認めないという神戸市のガイドラインが発表されたため、苦肉の策として、午前・午後に分けて句会をしてはどうかと考えました。併せて、従来の半分の人数で午前・午後と2回会場を借りるため、受益者負担の原則により参加費を50%値上げするという案を考えました。

この二つの案を6月28日に開催された運営委員会で審議し、出席委員全員の承認を頂きました。本部吟行も同様に参加費を値上げすることになりました。新型コロナウイルスへの感染防止対策の一つとして推奨されていますのが三密を避けることです。50名の方が一堂に集まる場合、三密を避けるためには100名収容できる会場が必要になります。8月からは、従来通り第1木曜日の午後の開催となりますが、神戸市内でこの大きさの会場の数は限られており、取り合いの状態になっています。予約が取れたとしても、会場が大きくなれば会場費も高く、今までは3千円ほどで借りられたものが1万円を超えます。

また、3〜6月の間の本部例会・本部吟行・先師追悼句会等の行事の中止により、参加費収入が大きく減りました。コロナ後の経済や社会の動向も不明です。そこで、運営資金の強化を図るために、会員の皆さんから随時かつ任意の寄付を頂くための基金を開設したいと思っています。これも内容を固めて、9月の運営委員会で審議する予定です。

話は変わりますが、私自身が3月の下旬頃、新型コロナウイルスに感染したのでは、と思ったことがあります。37.2度の熱があり、喉が痛く、倦怠感がありました。翌日意を決して掛かり付けの先生に診ていただいたら花粉症との診断でした。ホッとしたものの、もし感染していたらと不安になりました。雑詠の選を誰に代わって貰えばよいか。編集長や同人会長、経理部長が感染されたら、誰に代行してもらったらよいか、ということです。

会社や事業所では、BCP(事業継続計画)というものをあらかじめ策定し、責任者に事故が有れば誰がその職務を代行するかを決めておくそうです。九年母会でもそのような準備をしておかないと、万が一の時に混乱すると思います。九年母版BCPの案を作り、これも
次回の運営員会で協議して頂こうと思っています。

インターネットを用いた句会の活用など、他にもコロナ後の課題があると思いますが、着実に実行していきたいと思います。

2020年6月3日水曜日

ルールを守る

安部首相が全国の小中高校に対し、一斉の休校要請を出したのが2月27日。3月2日から休校に入り、6月1日の解除まで、3ヶ月の長い自粛生活が続きました。そのような日々の中で私は、日本人の、ルールを守るという規範意識の強さを再認識しました。手を洗う、マスクをする、三密を避ける、という政府や自治体の要請に対して、しっかりそれを守る国民性。欧米のように強制力を使って服従させるやり方とは正反対のやり方で、成功を収めた例だと思います。

この事は俳句という文芸にも通じると思います。五・七・五という定型を守ること、季題を一つ用いること、というルールを堅く守るということです。自由律の句が流行ったことがりますが、メジャーな文芸にはならなかったのです。無季の句を推奨した流れがありましたが、これも滅びてしまいました。なぜルールを守るのでしょう。私は、その方が心地よいからだと思います。無理に作った物には、やはり無理があります。数百年の歴史を越えて来た文芸には、ルールをルールと意識しない心地よさがあるのだとおもいます。

コロナ禍の影響で、句会も講座も、本部例会も本部吟行も、全て中止になりました。全国各地で計画されていた俳句大会もすべて中止です。まだ暫くその影響は続きますが、いつまでもこのままでは困ります。今月から各地の句会が、十分な対策をした上で再開されます。赤穂での本部吟行も予定通り開催します。7月からは本部例会も再開します。しかし従来の広さの会場では、半分しか入れて貰えません。今までの倍の広さの会場が必要なため、句会の会費の再検討も必要です。

これからは、安全が第一です。句会場からクラスターを出さない工夫が大切です。三密を避け、手洗いをしっかりし、マスクをすること。どこの会場でも、対策をしっかりお願いします。

2020年5月6日水曜日

哲也忌

 この5月6日は、前主宰五十嵐哲也先生の、4回目の命日です。例年のように神戸の須磨寺にて、播水・哲也両先生の追悼句会を催す予定で準備を進めて参りましたが、突如降って湧いた新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、中止のやむなきに至りました。まことに残念です。この事情は、医師であられた両先生にはご理解頂けるかと思いますが、来年は追悼会を開催したいと思っています。それまでにコロナ禍が収まっているように祈りたいものです。

 ご存じのように五十嵐哲也先生は、故五十嵐播水元主宰のご長男であられ、平成12年4月、播水先生ご逝去を受けて、俳誌九年母の第4代目の主宰に就任されました。阪神淡路大震災の影響により会員が大幅に減少し、播水時代の会の大黒柱が相次いで亡くなって行く中で、会の経営に随分苦労されました。平成27年3月、「九年母」1050号記念式典にて私に主宰を譲られ、名誉主宰となられましたが、その時の安堵の笑顔を今でもはっきりと覚えています。

 翌平成28年2月、事態が急変しました。洲本市で開催された永田青嵐顕彰全国俳句大会の表彰式の後の懇親会にて、食事中に食物を喉に詰められ、救急搬送されました。そして意識の戻らぬまま、5月6日午前2時31分、低酸素脳症により87歳の人生を閉じられたのです。大会当日、近くの食堂でご一緒した昼食と、杖をついて懇親会場に向かわれるお姿が最後の思い出となりました。
 
 少子高齢化の影響で、会の経営は厳しさを増しています。加えてコロナ禍による会費収入の減少が、これから重くのしかかって来るでしょうが、ともあれ九年母会は健全に運営されています。先生には、4年後の創刊100周年に向かって会員が一致協力して進んでゆく姿を、高いところからご覧頂きたいと思います。
 御魂の安らかならんことをお祈りしつつ、合掌。     
                              主宰 小杉伸一路


2020年4月2日木曜日

俳句の整理

新型コロナウイルスによる肺炎が世界的に大流行しています。当初私は、3月20日頃には収束に向かうものと考えていましたが、イタリアでパンデミックを起こし、あっという間に欧州全体を巻き込みました。その後世界各地に伝播し、現在では米国に於いて凄まじい勢いで感染者を増やし続けています。5月の連休がすぎる頃には多少良くなるか、との観測も出ていますが、全く予断を許しません。まさに、明日は我が身の毎日です。

しかし、毎日脅えてばかりいる訳には行きません。必要があれば外出し、しっかり仕事をしないと、生活が出来ません。私達俳人は、何をすれば良いでしょうか。一人で無理なく歩ける範囲で吟行して、新鮮な空気を吸い、日光に当たることで健康を維持しましょう。新型コロナウイルスに対する免疫力を高めることにより、病気に掛かりにくい体を維持できます。毎日しっかり俳句を作って行きましょう。

もう一つ提案があります。この際、今まで作って来た俳句を整理してみたらどうでしょう。若い頃に作った俳句に触発され、素晴らしい俳句が詠めるかもしれません。句帳やノートを整理してみましょう。コロナ騒動が一段落したら、九年母句集を復活しようと思っていますので、平成23年以降の作品を纏めておいて下さい。個人で句集を編んでみようと思われる方はご相談ください。折角出来た余裕時間ですから、前向きに考えて進みましょう。

2020年3月1日日曜日

俳人と新型肺炎

いよいよ明日3月2日から、安部首相の要請に基づき、全国の小中高校で休校が実施されます。一部では、地元の状況から実施しないところや、時期をずらすところもあるようです。フルタイムの仕事を抱え、職場を休めない皆さんの間には、自宅での子供の生活や学習について、混乱と困惑とが渦巻いているようですが、何とか工夫して協力するしかないと思います。もう3週間ほどの辛抱です、何とか切り抜けましょう。

ところで、本日3月1日、汀子先生のお宅で句会があり、参加しました。参加者は20名。高齢の方5名は、新型肺炎を懸念して欠席投句でした。マスクを着用している方はおられず、咳・くしゃみをされる方もおられません。体調を整え、万全の準備で臨まれたのでしょう。他の人に迷惑をかける可能性があれば、潔く欠席するのが、句会に出席する者の礼儀であり務めだと思います。雑詠に出す句が無いからつい無理して、という態度はマナー違反です。

兼題は「春塵」「蜆」「燕」の三題だったのですが、「春塵」を上手く使って、新型肺炎に対する想いを詠まれた句が幾つかありました。汀子先生ご自身も、「時事になるかなと思いながら出してみた」と仰っておられました。確かに時事的かも知れませんが、時代の記憶遺産として、一句残しておくのも意味があることです。

兵庫県でも終に患者が発生したという報道が、今入りました。たとえ罹患しても発症しない様な、健康な体を保ちましょう。免疫力を高めるために、栄養のある食事を一日三度しっかり摂り、睡眠時間を十分に取りましょう。手洗いとうがいを励行し、人混みを避けましょう。大切な事は、新型肺炎に必要以上に脅えない事です。病は気から、と言います。気が病むことを病気と言います。罹らないように注意し、万が一罹ったら直す。それでよいのではないでしょうか。俳人らしく、凛とした態度でこの国難に対処しましょう。

句会や講座が休止の間、溜まっている仕事の目途が付いたら、久し振りに双眼鏡と望遠鏡を持って、野鳥たちの許を訪ねてみようと思います。人混みを避けて車で山に入り、木々の出すフィトンチッドという滅菌力のある化学物質を存分に吸入して来ます。暫くお目に掛かれませんが、お元気でお過ごしください。

2020年1月26日日曜日

第4回九年母全国新年俳句大会終了

第4回九年母新年俳句大会が1月26日、生田神社会館に全国から70名の会員誌友をの参加を得て、盛大に開催されました。源平合戦の歴史を語る箙の梅(えびらのうめ)が咲きそめる境内には時折薄日が漏れ、寒中とは思えぬ暖かい吟行日和となりました。

新推薦作家や新同人に推挙されて初めて参加し戸惑う方もおられましたが、童謡「春よ来い」の合唱など、和気藹々とした雰囲気の中で、主宰による年頭の訓示、新同人会長の挨拶、九年母賞受賞者の表彰、句碑建立功労者への感謝状の贈呈、新推薦作家・新同人の推挙の発表等の行事が執行された後、昼食を挟んで午後1時20分から、嘱目3句での句会が開催されました。

清記の回覧も極めて順調で、次々に名句が披講されました。主宰の講評にしばし耳を傾け、なるほどと頷いている内に、あっという間にお開きの時間となりました。終了後、2階のロビーに席を設けていただき、役員の皆さんや遠方から来られた方を囲んで慰労会を催しました。

初めてお目に掛かった方が沢山居られましたが、主宰がどんな人物なのか、本部の雰囲気がどんなものであるかを、理解して頂けたと思います。顔見知りになられた方も多いと思います。次は、4月19日に須磨寺で開催します「先師を偲ぶ会」です。今回同様、沢山の方がご参加下さいますようお願いします。

九年母賞を受賞された皆様、新推薦作家・新同人に推挙された皆様、句会で入選された皆様、おめでとうございました。遠方から参加された皆様、お疲れ様でした。役員の皆様、ご苦労様でした。皆様、有難うございました。(主宰)