2020年8月2日日曜日

季題の勉強

 先日、課題句の選者をお願いしている方から相談がありました。その方が「菌」という兼題を出されたのですが、集まった応募句に中には、この兼題を「きん」と読まれて、細菌の意味で句を詠まれたものが幾つかあったとの事でした。この兼題は「きのこ」と読まなくてはなりません。殺菌や滅菌の菌ではありません。
 ホトトギス新歳時記では「菌」が主題で、傍題に「茸」があります。毒茸・茸番・茸飯なども傍題として出て来ます。一方、角川合本歳時記では「茸」が主題で、「菌」は傍題に有ります。ややこしいことですが、「菌」という兼題が与えられたら、先ず歳時記でどのような内容のものかを確認することが大切です。歳時記には次の句が載っている筈ですから、これで「菌」を覚えます。
    
    爛々と昼の星見え菌生え    虚子

 季題の中には、こんなのが季題?、と思うものが少なくありません。数年前、課題句の兼題に「瓢の笛」(ひょんのふえ)が出された事があり、発行所にも数件の問い合わせの電話がありました。曰く「ヒョウタンの笛とは何のことか」。「いすのき」という植物の葉に出来る虫こぶの事で、虫が出た穴を吹くと、ひょう・ひょうと鳴る。これを瓢の笛と言う、と説明して、納得して頂きました。
 「火事」という季題があります。年中発生する火事が、なぜ冬の季題になっているのか。「河鹿笛」という季題は河鹿の声なのか、河鹿を呼び寄せる笛なのか。「竈猫」(かまどねこ)とはどんな猫なのか。「樫鳥」(かしどり)という鳥はどんな鳥なのか。「がうな」とは、「もろがへり」とは何の事か。歳時記には知らない事がたくさん載っています。角川俳句大歳時記や講談社版日本大歳時記などを読み始めると、楽しくて時の経つのを忘れます。
 日常的に使う季題を学ぶことに加えて、歳時記を読んで、新しい知識を身につけることにも務めて頂きたいと念じています。

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