2019年4月3日水曜日

新元号について

4月1日に、「令和」という新しい元号が発表されました。万葉集から採られたと云いますから、私達俳人にとっては願ってもない事です。ご存じのように、万葉集は日本最古の歌集であり、我が国が世界に誇る文学作品だからです。漢字の音を借りて日本語を記すという、画期的な方法で書かれており、天皇から農民・防人まで、様々な階層の人の歌が納められている、国民的抒情詩集です。申すまでもなく、俳句は短歌から派生した文芸であり、万葉集は俳句の故郷であるといっても過言ではありません。

西暦645年に制定された「大化」から数えて「令和」は248代目になるそうですが、特筆すべきことは、初めて我が国の古典から選ばれたと云うことです。「平成」まではすべて中国の古典である漢籍から選ばれていました。日本の古典から選ぶという方式が定着すれば、将来「奥の細道」から選ばれる可能性もないことは無い訳です。芭蕉の文章には漢籍から採った言葉が使われています。例えば、同書「壺の碑」の一節に「昔より詠み置ける歌枕多く語り伝ふといへども、山崩れ、川流れ。、道改まり、石は埋もれて土に隠れ、木は老いて若木に代はれば、時移り、代変じて、その跡たしかならぬことをのみを、ここに至りて疑ひのなき千歳の記念、今眼前に故人の心を閲す。行脚の一徳、存命の喜び、羇旅の労を忘れて、涙も落つるばかりなり。」とあります。この中から2字、例えば「徳喜」が選ばれるかも知れません。そうなれば、俳人にとっては我が意を得たり、です。荒唐無稽と笑われるかも知れませんが、将来のことは誰も分かりません。政治や経済、法律の書物ではなく、日本人の心の故郷である歌集から選ばれた事を喜びたいと思います。少なくとも、漢籍には戻らないでほしいと願っています。

ところで、今月の27日から来月の6日まで、大型連休が十連休となります。そのため26日には「九年母」5月号を発送する計画で編集作業をしていますが、郵便事情により皆様のお手元に届くのは早くても5月7日以降になります。連休の状況を勘案して対応して頂くようお願いします。また、各支部・句会の責任者の方は、この旨会員に徹底して頂くように、重ねてお願いします。