先日の句会で、次の句が投句された。
ザリガニの逃げなむとせし溝浚へ
ホトトギス新歳時記には無い季題だが、角川合本歳時記には蟹の傍題に「ざりがに」がある。片仮名表記ではなく平仮名になっているところに注意してほしい。伝統俳句では、物の名前を片仮名で書くのは外来語だけとされているのだ。
すくすくと育てよわが子チューリップ
アイリスのシルクロードの夢運び
鈴蘭やシスターの売るバター飴
いずれの句も、外来語は片仮名で表記されている。ザリガニは蟹(正しくは海老)の一種で、後にしざる蟹という意味から、しざりがに、ざりがに、と変化したらしい。従って掲句は、
ざりがにの逃げなむとせし溝浚へ
とするのが正しい。図鑑や広辞苑ではザリガニとなっており、日常生活でもザリガニであるが、伝統俳句では「ざりがに」と書かなくてはいけないのだ。こんな句も有った。
光りつつ人造クラゲ浮遊中
クラゲが片仮名表記になっているが、正しくは「水母」「海月」又は「くらげ」と書くべきもの。理由は上述の通りである。その他にも、蛍をホタル、鶯をウグイスと表記した句は、日常的に散見する。
梅の木にウグイスが来てホーホケキョ
という恐るべき句も有った。鳥類の勉強ならばこれで良いのだが、俳句の世界では通用しない。気を付けて欲しい。
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