2015年9月9日水曜日

て止めの句(重要)

選句控帳にある「て止め」の句を拾ってみよう。選句控帳とは、句会や講座、雑詠選などで目にした問題の句を控えたもの。優れた句を控える方は大勢おられるだろうが、私は問題の句を控えて、教材にさせて頂いている。

     鈴蘭のハイジの国へ誘いて
     鈴蘭を取り巻く山気よく澄て
     車中まで届く薫風髪揺れて
     薫風に瞬時の気合い飛び交ひて
     濡れた葉の陰にででむし角見せて
     急坂を登る学徒ら汗かきて

これらの「て止め」の句は、短歌の上の句だと思う。難しく言うと、連句の第三の句なのである。俳句は連句の第一句(発句)が文芸として独立したもの。従って、俳句と云う前は発句と言った。今でも俳句のことをホ句と言う人があるが、これは発句が訛ったもの。俳句は発句なのだ。一方、第三の句は発句から数えて三つ目。という事は俳句(=発句)ではないのだ。

ところで、第三の句には、「に」「て」「にて」「らん」「もなし」のいずれかで止めるという決まりがある。この事からしても、「て」は非常に危険な止め方だという事が理解できるだろう。

連句では、発句には季題と切れを入れるという決まりがある。続く七・七は脇句といって発句に対する挨拶を詠む事になっている。これに続く第三の句は季題や切れの約束が無いので、続く第四の七・七と合わせると、短歌の形となる。

    (第三) 鈴蘭を取り巻く山気よく澄て (第四)ただありあけの月ぞ残れる

これらの事からして、第三の句は俳句ではなく、短歌の上の句だということが分かると思う。残念ながら、掲題の句は、すべて俳句ではない。これに対して、て止めで有っても、季題と切れとが入ると俳句になる。

    鈴蘭を愛づや少女の瞳もて     伸一路

下五の最後が「て」で止まる句が出来た場合は、「それにつけても秋は悲しき」と続けてみる。第三の句は、これが繋がる。この違いを掴めるかどうかが、上達への試金石になる。次回は、「て止め」の句が出来た時にどうするか、を考えてみよう。     

   

0 件のコメント:

コメントを投稿