作者によっては毎日何十句という俳句を詠む人もあれば、雑詠選に出すため月に5句詠むのが慣わしのようになっている人もあります。人は様々で、どちらが良いというものではありません。しかしこれはベテランの域に達した人のことであって、その域に達していない人は、多作を心得るべきだと思います。
駄句でもなんでも良いのです。とにかく5・7・5の形に言葉を配して季題を置く事を、普段から心掛けましょう。散歩する時も、食事をする時も、家事をする時も、いつも俳句のことを考えていて、とにかく何でもよいから5・7・5にしてみましょう。俳句のリズムを心に浮かべることです。朝顔があったら詠む。蝉が鳴けば詠む。何かに感動したら詠んでみましょう。すべて訓練です。
この様な訓練を積んでいると、自然に俳句が浮かんでくるようになります。句材を発見する訓練が効果を発揮しだしたのです。たくさん詠んで、その中から気に入った句を句会に出せばよいのです。とにかくたくさん詠むことをです。そうすれば良い句も詠めてきます。
私はその昔、伝統俳句協会賞の応募句を得るために、三日間神戸港に通って、毎日50句詠む行に取り組んだことがありました。俳誌「未央」の主宰をされた吉年虹二先生が今宮戎神社の初戎献詠俳句祭の表彰式の際、「君は月に何句詠むかね」と質問されました。私が主宰になる遥か前のことです。私は「毎日5句ぐらいですから150句ぐらいです」とお応えしたら先生は、「私は毎月900句は読んでいるよ」と仰いました。さすがに偉い先生は違うと感心したことがありました。皆さん、たくさん詠みましょう。